令和4年度天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会
ジェイテクトSTINGS
3
0
東レアローズ
4 福山 汰一
8 柳田 将洋
9 村山 豪
10 ティネ・ウルナウト
12 関田 誠大
14 西田 有志
L
17 本間 隆太
2 高橋 健太郎
4 酒井 啓輔
9 富田 将馬
14 パダル・クリスティアン
17 小澤 宙輝
18 西本 圭吾
L
3 山口 拓海
1 藤中 優斗
2 金丸 晃大
7 柳澤 広平
11 袴谷 亮介
18 道井 淳平
20 都築 仁
L
21 高橋 和幸
1 難波 尭弘
5 米山 裕太
6 手塚 大
7 峯村 雄大
8 真子 康佑
16 上條 レイモンド
――試合を振り返って。
天皇杯の開催にあたってこのような素晴らしい会場を用意してくださった運営の方々には、僕たちの高いモチベーションを引き出していただいて感謝しています。これからリーグが再開するので、その気持ちを忘れないように引き続きチームの完成度を高めていきたいと思います。
――準決勝から短い時間でしたが、どのようにコンディションを整えましたか?
各々がやりやすいリカバリーだったり、準備の仕方をして臨んでいました。僕自身は、できるだけリカバリーの道具を使って、体をほぐしてそこから試合に向かうという時間の使い方をしていました。昨日の試合でああいう勝ち方をして、結果的には今日の試合に向けていいステップになったと思います。チームとしても個人としても、できているところをしっかり確認することができました。今日の試合で言えば、2セットをリードした段階で逆の立場(昨日のJTサンダーズ広島の立場)だったので、自分たちにとってもいい刺激になり、最後まで気を抜くことなくやり抜けたと思います。
――期待に応える形での優勝でした。
ファンの方や関係者にタダで期待していただくことは絶対にないので、非常にうれしいことです。西田選手、関田選手を含め、プロフェッショナルとしてそういう期待に応えることは、必然的なチャレンジです。(天皇杯の優勝は)自分にできることを追求し、その繰り返しでつかんだ結果。リーグ戦の再開に向けてさらに強いジェイテクトSTINGSをお見せできるようにすることが自分たちの最大の仕事なので、気負うことなく、これからも自分たちらしいプレーをしていきたいと思います。
――試合を振り返って。
東京体育館で試合をするという夢を叶えることができて、本当に感謝しています。正直、この結果を出すまで苦しい状態で、バレーボールをやめざるを得ない結果になることも想像しました。でも、こうやって優勝を勝ち取れるチームの一員として試合に出られたことに心から感謝しています。1回の優勝かもしれないけど、自分の心の中では大きな思い出になりました。
――2年前の優勝との違いはありますか?
そのときも僕が何かをしたわけではありません。点数を決めるポジションであって、僕一人では勝っていない。ただ、今年のチームは打つ選手がいるし、サーブで点が取れる選手がいます。ディフェンスでしっかりとラリーに持ってきてくれる選手もいる。非常にレベルの高い選手が集まりました。オポジットは打数が増えるのが必然ですが、ブロックでタッチを取ったりディフェンスに入るのも自分の役割です。自分の役割は変わりませんが、2年前よりレベルが高いチームになったと思います。
――優勝に対する思いは?
昨年は自分の力不足でチーム(Vibo Valentia)を2部に降格させてしまいました。今シーズンから日本に戻ってより勝ちたいという気持ちが強かったし、そこで何を求めるかというと「優勝」がほしかった。そこに向かってリーグ戦も取り組んでいましたが、勝てないもどかしさがありました。でも、そこに対してみんなでどうやってよくしていくかの繰り返しであって、この天皇杯で全員がようやくチームにフィットしてきたという感覚です。これからの成長が楽しみだし、チームとしてより強くなると思います。
攻守にわたって圧倒した決勝戦も、崖っぷちから這い上がってきた準決勝も、そして、全員の力で勝ち上がってきたそれまでの戦いも、すべてがありのままのジェイテクトSTINGSだ。今回の天皇杯でいえば、その象徴がMVPを獲得した柳田だったと言えよう。記者会見では、開口一番にこう話している。
「今日は昨日以上に選手全員がやるべきことを明確にし、それをプレーに移していたと思います。僕もプレッシャーを感じることなくバレーボールをすることができました。結果的にMVPをとれましたが、チームのみんな、応援してくださるファンの皆さまに取らせていただいたという気持ちが強いです」
圧巻の内容は、決勝戦で残した記録が物語っている。柳田のアタック決定率は61.1パーセント。バックアタックは、5本の打数のうち5本を決めた。ブロックとサーブでも1点ずつマーク。試合の立ち上がりこそ東レアローズに4点を先行されたが、強烈なバックアタックで流れを引き寄せたのもやはり柳田だった。セッターの関田も巧みにトスを散らし、勝負どころではウルナウト、西田が強打を炸裂させる。本間、高橋を軸に守備も安定し、落ち着いた試合運びを見せていた。
中盤はブロックが機能した。関田、福山が立て続けにブロックを決めて、16−15とこのセット初めてリードを奪う。さらに西田、柳田のスパイクなどで3連続得点。一気に突き放しにかかった。21−18の場面でリリーフサーバーの袴谷を投入。村山のブロックポイントにつなげた。最後はウルナウトのハイボールを柳田が打ち抜いて25点目。相手の得点を21点に抑えて第1セットを先取した。
第2セットは圧巻の試合運びだった。序盤に5連続得点。西田が渾身の力を込めてスパイクを打ち抜いた。苦しい時期を乗り越えてきた。試合後、西田は原因不明の高熱が、リーグが開幕する前から1カ月半も続いていたと告白。「誰ともしゃべられず、ずっと孤独な状態が続いていた。ものすごい恐怖感があり、ジェイテクトSTINGSの一員としてこの先バレーボールができるのか」と気持ちをさらけ出した。コートに帰ってきた西田が輝きを取り戻した。豪快に左腕を振り抜き、7−2からサービスエースを連発。アップゾーンから手拍子を送る仲間の祝福を受けた。
その後も完璧な試合運びを見せた。村山のブロックでブレイク。柳田が抜群の守備範囲を見せ、セッターの関田に完璧なパスを供給する。それを西田が豪快に決めて、7点のリードでテクニカルタイムアウトを迎えた。中盤以降は柳田のバックアタック、ウルナウトのスパイクで得点を量産。最後は西田が東レのパダルをシャットアウト。25−13と圧倒し、優勝に王手をかけた。
「第1セットの途中から選手は精神的に安定した顔つきになったし、昨日に続いて言葉も多かった。第2セット以降は効果的にサーブが入って、相手の攻撃の選択肢を減らすことができた。ブロックの枚数も増えたので、そこが一番の勝因だと思います。第3セットも引き続きそういうバレーボールができましたが、サーブが入ったのが大きかったと思います」
体調不良のファジャーニ監督に代わって指揮をとった酒井監督代行は穏やかな笑みを浮かべながら試合後にこう話した。その言葉通り、第3セットもサーブが明暗を分けた。序盤は柳田のサービスエースなどで3点を先制。これでペースをつかむと、福山のクイックなどで確実に得点を重ねていく。西田のバックアタックなどで中盤に4連続得点。17−10と試合の趨勢を決めた。福山のクイックでチャンピオンシップポイント。最後は西田が決めて、歓喜の瞬間を迎えた。
2大会ぶり2度目の優勝に輝いた。試合を重ねるごとにチームが一つになり、最高の形で大会を終えた。キャプテンの本間が言う。
「勝てない時期が続いたときは、チームとしてもネガティブな感情でした。僕自身も、もう少しキャプテンとしてやらないといけないことがあるのかなと考えました。でも、それも勝たないと絶対に解決していきません。この天皇杯はそういう意味で、自分にとってもチームにとっても大きな大会になったと思います。このチームは三冠を目指しているので、まず一つクリアできたことでいいステップが踏めました」
大事なのはここからだ。2023年1月7日にリーグ戦が再開すれば、相手は「リーグ6位のジェイテクト」ではなく「天皇杯覇者のジェイテクト」として死に物狂いで向かってくるだろう。新たな戦いは、すでにはじまっている。
17 points
14 西田 有志
11 points
8 柳田 将洋
7 points
10 ティネ・ウルナウト
75.0 %
9 村山 豪
66.7 %
4 福山 汰一
61.1 %
8 柳田 将洋
2 本
4 福山 汰一
2 本
9 村山 豪
1 本
8 柳田 将洋
3 本
14 西田 有志
1 本
8 柳田 将洋
酒井大祐監督代行
――アタック決定率がチームで60.9パーセントと高い数字を残しました。
第1セットから1枚ずつデータをもらうのですが、第2セットに80パーセントという決定率を見たのは自分の中でも初めてでした。昨日までよく入っていた東レのパダル選手、富田選手、小澤選手のサーブが、今日に限っては効果が低かったというのもあるかもしれません。レセプションの数字は相手より高いと思いますが、その分、攻撃の組み立てもしやすかったと思います。もちろんセッターの関田選手がビデオを見て研究し、相手のミドルに対して駆け引きをしていたと思う。それも勝因の一つだと思います。
――フローター陣のサーブの狙いは?
昨日と今日の試合で伝えていたのは、「チームとしてバランスを取る」ということ。ビッグサーバーが3人いるので、その分、ミス率も上がります。日本ではサーブポイントを1本取るのにミスを3本してもいいと言われていますが、それよりも1本目に打つファーストサーブのミスを減らしていけば相手にもプレッシャーがかかっていく。その意味で、ビッグサーバーの3人以外、関田選手、福山選手、村山選手である程度、バランスを取ることができました。それを選手が理解してコートでプレーしてくれた。それは選手に力があるからできたことだと思います。
――大会の中でチームに変化はありましたか?
自分の中ではあまりありません。ただ、選手に自分たちのバレーを理解させていくのが我々の仕事だと思っています。それが最初は、メンバーがそろわなかったこともあって、なかなか浸透しませんでした。自分たちの力不足もあって選手に伝え切れず、そのため役割が曖昧になったと思います。これだけ圧勝しても課題はあるので、それを潰していかないと上位には食い込めません。柳田選手、西田選手、関田選手といったポテンシャルが高い選手をどうまとめていくかも大事になる。役割を明確に伝えてそれを遂行してもらうようにしていけば、リーグでも浮上していくと思います。